コロナ禍でデジタル化が社会変化として起こる中はじまった改正電子帳簿保存法(以下、改正電帳法)。さらに、2021年12月に猶予2年という宥恕措置が設けられることとなり、多くの企業から混乱の声を聞きます。このような状況の中、どのように改正電帳法に備えていくべきなのかご紹介し、対応に取り組む経理部門の皆様を応援します。

猶予2年を賢く活用して改正電帳法に対応しましょう!

猶予2年の期間は保存要件を満たした状態で電子取引を保管する必要はありません。
経理部門における本来の目的は「電子化・ペーパーレス化によるコスト削減・生産性向上」なので、
猶予2年を活用してまずは積極的に電子データを保管することにトライしましょう。

猶予2年は『電子化・ペーパーレス化のための準備期間』です
経理部門でやるべきことをチェックしましょう!

ここだけは押さえておきたい!
電子帳簿保存法

①まずは、ここを押さえて電子帳簿保存制度を理解しましょう

電子帳簿保存法(以下「電帳法」)は、簡単に言えば、帳簿や決算書、請求書など国税関係帳簿・書類を、一定の条件を満たして電子化して保存することを認める法律です。電帳法には、「電子帳簿等保存制度」「スキャナ保存制度」「電子取引保存制度」の3つの制度があり、それぞれ対象となる帳簿や書類ごとに認められている保存方法が異なります。まずは、それぞれの制度について確認してみましょう。

  • 1.電子帳簿等保存制度

    会計システムで作成した仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿や貸借対照表、損益計算書などの決算関係書類、販売管理ソフトで作成した請求書・見積書などの控えを一定の要件のもとに電子データのまま保存できる制度。
    ⇒ 一般的な会計システムがあればすぐに電子化が可能

  • 2.スキャナ保存制度

    取引相手から受領した紙の請求書・領収書、もしくは自社が紙で作成した請求書・見積書などの写しを一定の要件のもとスキャンし、データを保存して紙の書類を廃棄できる制度。
    ⇒ 紙の書類をスキャンして電子化・ペーパーレス化を実現

  • 3.電子取引保存制度

    請求書や領収書などと同様の取引情報が記載された電子データを取引相手から受領または送付した場合、電子データのまま保存する必要がある制度。
    ⇒ 電子データでの保存が義務化されており、すべての企業で対応が必要

②ここから始めましょう!まず取り組むべき書類とは

経理業務に最も影響がある「請求書・領収書」から取り組みましょう

電帳法に対応することは、社内全体で取り扱うさまざまな書類の電子化・ペーパーレス化につながります。一度に企業内のすべての書類を対応するのは大変ですので、まずは、受領した請求書・領収書から取り組みましょう。請求書・領収書は、経理業務に最も影響があり、経理業務から支払業務へとつながっているため、優先的に取り組んだ方が効果が出やすいです。
ここからは、取り扱う枚数が多く、また経理業務に影響が大きい請求書・領収書の対応方法について詳しく説明します。

③先に押さえておきましょう!猶予2年後に必要となる保存要件

電子取引は猶予2年後の2024年1月からは一定の条件を満たして保存する必要があります。そのために必要な要件を先に押さえておきましょう。

訂正削除の防止に関する事務処理規程を定める必要があります

システム導入やタイムスタンプ付与ができない場合は、多くの電子データに柔軟に対応できる事務処理規程の策定、運用、備付けによって保存要件を満たす必要があります。

【電子取引の保存要件】 下記の4つのうち、いずれかの措置によって保存する必要があります。

措置一

タイムスタンプが付与されたデータを受領
⇒全ての取引先からタイムスタンプを付与したデータを送付してもらう必要がある

措置二

データを授受後、速やかにタイムスタンプを付与
⇒データの信頼性は確保できるが、タイムスタンプ利用コストが発生

措置三

データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
⇒システム投資が発生する。取引相手にも同システムを利用してもらう必要がある

措置四

訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け
⇒システム投資をすることなく、自社の業務に合わせて規程を作成することで対応可能

日付・金額・取引先で検索できるようにしましょう

制度要件上、日付・金額・取引先で検索できるようにする必要がありますが、そのためには証憑収集・保管システムの活用、もしくは国税庁が示す右記の方法で保存する、のどちらかになります。経理の生産性向上の観点から証憑収集・保管システムの活用をおすすめします。

システムを活用しない場合は、以下のいずれかの方法で保存することで対応しましょう。

  1. 以下のような方法でデータの保存を行う
    ・ファイル名に取引年月日・取引金額・取引先の規則性を持たせる
    例)2022年4月1日にABC社から受領した110,000円の請求書PDFファイル
    ⇒「20220401_ABC社_110,000.pdf」
    ・Excelファイルで索引簿を作成し、その索引簿を使用して検索できるようにする
  2. 取引先」や「各月」など任意のファイルに保存する

④取引・書類ごとにどう対応する?これで電子化にきちんと取り組めます!

一度に企業内のすべての書類を対応するのは大変ですので、まずは、請求書・領収書から取り組み、その他の書類についてはやれるところから順次取り組みましょう。詳しくは下記の対応方法をご確認ください。

相手先から受領(仕入・経費関連)

受領方法 保存方法


電子データで受領 メールに請求書データ(PDFファイル)が添付された場合 添付された請求書データ(PDFファイル)を保存
ホームページ上で請求書データ(PDFファイル)をダウンロードした場合 ダウンロードした請求書データ(PDFファイル)を保存
ホームページ上に請求書が画面表示される場合 ホームページ上に表示される請求書をスクリーンショットで画像データにして保存
EDIシステムを利用している場合 システム上でデータ保存するか、またはダウンロードしてPDF等で保存
FAXで受信した請求書を紙に印刷せずにPDF等にする場合 PDF等にした請求書データを保存
保存方法 紙の請求書をスキャンして、データを保存


電子データで受領 メールに領収書データ(PDFファイル)が添付された場合 添付された領収書データ(PDFファイル)を保存
ホームページから領収書データ(PDFファイル)をダウンロードした場合 ダウンロードした領収書データ(PDFファイル)を保存
Amazonなどホームページ上に領収書が画面表示される場合 ホームページ上に表示される領収書をスクリーンショットで画像データにして保存
クレジットカードの利用明細データや交通系ICカードによる支払データをホームページで確認している場合 〈PDFファイルなどダウンロードできる場合〉
ファイルをダウンロードして保存
〈ホームページ上に画面表示される場合〉
利用明細をスクリーンショットで画像データにして保存
紙で受領











電子データで受領 メールに書類データ(PDFファイル)が添付された場合 添付された書類データ(PDFファイル)を保存
ホームページ上からデータ(PDFファイル)をダウンロードした場合 ダウンロードした書類データ(PDFファイル)を保存
ホームページ上に書類内容が画面表示される場合 ホームページ上に表示される書類をスクリーンショットで画像データにして保存
EDIシステムを利用している場合 システム上でデータ保存するか、またはダウンロードしてPDF等で保存
FAXで受信した書類を紙に印刷せずにPDF等にする場合 PDF等にした書類データを保存
紙で受領 紙の書類をスキャンして、データを保存

 

相手先へ送付(売上関連

送付方法 保存方法
請求書 電子データで発送・送付 発行・送付した請求書データを保存
紙で受領発送・送付 紙の請求書をスキャンするか、作成したシステム上でデータ保存
領収書 電子データで発送・送付 発行・送付した領収書データを保存
紙で受領発送・送付 紙の領収書をスキャンするか、作成したシステム上でデータ保存
見積書・注文書などの書類 電子データで発送・送付 発行・送付した書類データを保存
紙で受領発送・送付 紙の書類をスキャンするか、作成したシステム上でデータ保存